顕微鏡で見たおいしいそばの構造
藤村和夫著「そばしょくにんのこころえ」のなかで、高瀬礼文という方がおいしいそばの断面図を顕微鏡で見た結果について触れています。高瀬先生は大学教授、数学者、オルガニスト、そば博士と多彩な方のようです。その内容を引用してみます。
うどんの麺線の構造
うどんの麺線はその内部で、強力粘性のグルテンがちょうどへちまの繊維のように細かい立体の網目を作り、その網目の中に小麦の澱粉やたんぱく質をいっぱいに詰めこんでいる構造をしている。
そばの麺線の構造
たんぱく質のうち約半分は水溶性(グロブリンやアルブミン等)であるが、残りの半分は冷水には溶けないで、水を含むと粒子が膨張するだけの不溶性たんぱく質である。水溶性たんぱく質と澱粉は水に溶けて糊状体になっているが、この糊状体が、その付着力で、膨張した不溶性たんぱく質のお互い同士くっつけあっているのである。これはたとえていえば、ちょうど「雷おこし」の構造である。おこしは、多数の米粒を、糊の付着力で付着させてできあがっている。
雷おこしは、その内部に空気の隙間があるので、食べたときの歯ざわりから生じる風味を感じるのだと思う。水まわしの時、そばを手のひらで上から押さえつけるようにすると、中の空気が逃げて出てしまい、でき上ったそばは、ラーメンのように平均的味覚の麺線になるだろう。
まとめ
おいしい麺をつくるには、まず適量の水を粉に均一にまんべんなく含ませることが大前提です。そして麺に空気を含ませるようにするとよいという結果を踏まえると、粉をふるってから水回しをし、あまり力まかせに無駄にこねないほうが理にかなっているということになります。
製麺機であれば少ない加水でも圧力をかけて麺にすることができますが、何回もローラーにかけて布状にするので麺の中の空気が逃げ出てしまいラーメンのように平均的味覚の麺線となります。歯で麺をかみ切るとき単調な食感となります。
おばぁちゃんなど非力の人が丁寧に水回しをしてやさしく打ったそばがおいしいという意見をよく聞きます。力まかせにこねて固い麺にするのではなく、ミルフィーユのように幾層にも空気をふくませ、柔らかいけれど弾力がある麺は今のところ機械にはできない領域です。
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