そばのゆで方(口伝からゆで時間や火加減などを考える)
そば職人も達人ともなると見ただけでそのそばがおいしいどうか分かってしまうそうです。
確かに角が立っていてツヤツヤしているそばはおいしそうですし、水を吸いすぎてふやけてクタッとしていたらおいしくなさそうです。
今回はそばの口伝をもとにゆで方について考えてみます。
そばの三返り(そばのみかえり)
釜の中に入れられたそばが、浮き上がり、湯の表面をゆっくりと泳いで釜の縁に到着して下に沈み、また反対側から顔を出して泳いでくる、といった動作を三回繰り返せばもうゆで上がったとされ、それに合う火加減が最良の火加減とされています。
そばはゆっくり対流するようにゆでる。また短時間でゆで上がるということでしょうか。
藤村和夫さんの著書「そばしょくにんのこころえ」のなかに次のような記載があります。
「釜全体に直接火が当たるのではなく、一ヵ所で燃え、その炎が長くのび、釜の底をなめていって煙道に吸いこまれるような流れを作る燃料の入れ方が釜下の技術だったのです。」
「薪でたいた釜で煮たおそばの方が、あたりがやわらかかったですね。やっぱり、そら煮えしないでふっくり煮えたということでしょうか。今のガスの火はするどすぎますよ。」
一茶庵片倉康雄さんの著書のなかに「沸騰する湯の勢いはそばをいれても衰えず、湯に落ちるやいなやそばが踊ってたちまちゆだるという状態」がよろしいと書いてありますので、私は今まで 地獄の釜のようにグラグラ沸騰させてからゆでてました。そばがかなりのスピードでくるくる回ります。
大きな輪を描きながら釜いっぱいにまわるよう火加減や鍋の位置を調整しなければならなそうです。
煮え前は恥
明治の頃まではまだカマドにゆで釜をはめ込んで薪を焚き、重い木の蓋をして湯を沸騰させ、投じたそばをやわらかく沸騰した湯の中で一端沈んでからややしばらくしてゆっくりと浮遊させゆるやかに煮ていました。「煮え前は恥」「そばの煮過ぎは恥じゃない」そばは芯を残さずしっかりとやわらかくゆでるべきだということ。
また先ほどの藤村さんの著書のなかに次のような記載があります。
「そばは歯で噛むようなものではなく、口に入れ歯が当たるか当たらないうちにフッツリと切れる喉越しがあってはじめてできることで、こうするには中心部をやわらかく、外側を冷水で締め、歯が外側の固い部分に食い込むか、舌で締めると全部が一瞬に切れるようにこしらえなければ駄目です。ですから「歯ごたえがある」そばは落第ですし、「アルデンテ」は讃岐うどんでも、本場の方には嫌われます。」
「昔の人は、「煮え前は恥」とかいって、そばの煮加減について生煮えのそばを出すのは一人前の職人のすることではないと強調しておりました。」
ひと昔前はかなりしっかりとやわらかく「煮て」いたようです。
ただ、そばのゆで時間は、使用するコンロの火力や鍋の大きさ、蕎麦の種類などによって違ってくるのは当たり前のことです。
以前、十割そばの細打ちをゆでて二十数秒と四十秒を食べ比べしてみましたが、二十数秒のほうが香やコシがあっておいしかったですが,四十秒だとおいしいところが湯に出てしまいだれて煮すぎでした。
そば粉は山伏などが水で練って生で食べていたくらいですから,十割そばはゆで時間が短くなります。そば粉は生で食べても消化がよいので大丈夫です。
一方、小麦粉に含まれる「βデンプン」は消化されにくいので,小麦のつなぎの配合率が多くなればなるほど,しっかり煮ないと腹をこわす可能性があります。
まとめ
二つの口伝をもとに、そばのゆで方をまとめますと
1 ゆっくり対流するように火加減などを調節しやさしくゆでる。
2 芯が残らないようしっかりゆでる。
3 1、2の条件を満たした上で、できるだけ短時間でゆでる。
という感じでしょうか。どちらにせよゆで上がりのタイミングを見極められるようにならないといけません。
ゆで上がりの麺はごくわずかな変化ですが、透き通ってみえるとか、少し太くなるなどと言われます。
次回からそばをゆでる際は動画を撮っておき、ごくわずかな変化が分かるか見てみようと思います。
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